大判例

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東京高等裁判所 昭和46年(う)2837号 判決

被告人 金石班

〔抄 録〕

所論は、本件事故は被告人の過失に基くものではなく、渡辺真行の一方的過失に基くものである。しかも、同人は何ら刑事責任も問われていない。本件起訴は被告人が在日朝鮮人であるためになされた弾圧であり、検察官が公訴権を濫用したもので、原審は公訴を棄却すべきであったのに、これをなさず、公訴棄却の申立に対し判断もしなかった。原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤があると主張する。

しかし、記録を調査すると、前述のとおり、本件事故は被告人および渡辺真行の過失の競合により惹起されたものであるが、被告人に過失がないとは到底認められない。渡辺真行が本件につき刑事責任を問われなかったとすれば、検察官の処置がやや不公平ではなかったかと見られるふしがないではないが、記録を精査しても、検察官が被告人を在日朝鮮人であるために弾圧しようという意図で本件公訴を提起したものとは認められない。従って、本件公訴提起は、検察官が公訴権を濫用したもので無効であるという主張は採用できない。また、公訴棄却については、被告人、弁護人は裁判所の職権による裁判を促すことができるだけで、刑訴法上その申立権を有するものではないから、裁判所はその申立に対しては、その都度判断を示す義務はなく、終局裁判においてその判断を示せば足り、その判断は黙示でも差支えないと解するのが相当である。原判決は有罪の判決であるから、原審は、その前提として公訴棄却の裁判の申立に対し黙示的にその判断を示しているといわなければならない。

要するに、原審が不法に公訴を受理した違法は認められない。(なお、所論は、原審が公訴棄却の判決をしなかったのは、法令適用の誤であると主張するが、右主張は法令適用の誤という控訴理由にあたらない)。

(関谷 寺内 中島)

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